大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)7874号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<一、につき>

以上のとおり、被告諸伏に過失が認められるので被告らは各自原告勇に生じた損害を賠償する責任があるが、原告勇にも過失があると言わざるをえない。事故現場は直線道路であつて見とおしも良く、警音器を鳴らしたことから考えてもその前から原告勇は加害車の動静に気付いていたものと認められる。加害車は、路地等から急に道路上に進出したものでなく、右道路上でUターンしているのであるから、原告勇としては減速し、Uターンの進行につれて自車の進路が開くのを待てばよいのである。しかるに原告勇は何等このような措置を講ずることなく、極めて危険な加害車の進行前部をすり抜けようという方法をとつている。又同原告が制限速度を超えて走行していることは前記認定のとおりであり、これを守つていれば前記の措置もとり易く衝突の蓋然性は少なかつたと言える。事故当時ヘルメット着用は法律上強制されていなかつたけれども、排気量三〇五ccの自動二輪車に乗る者としては転倒にそなえて、やはりヘルメットの着用は心懸けるべきであり、特に本件の場合、頭部外傷による傷害が一番大きなものであることを考慮すれば損害拡大という面で被害者の一つの落度と言いうるものである。

以上の点を考慮すると、被害車が二輪車であつて加害車に比すれば加害の程度において相当開きがあることを斟酌してもなお、ほぼ四割の過失相殺は免れないと言うべきである。(中略)

<二、につき>

なお被告らは過失相殺により減額された損害額から労災保険で給付された部分を控除すべき旨主張するが、労災給付金は、過失相殺による減額前の実損害に対し給付されるものであつて、被告らは、労災給付金の求償を受けた場合、求償全額についてこれに応ずる必要はなく、原告勇の過失を斟酌して減額した部分についてのみ応ずれば足りるのであるから、被告らの右主張は相当でない。

<三、につき>

相殺の抗弁について

加害車が本件事故で被害車と衝突したことは当事者間に争いがなく、右衝突は原告勇がその一因となつていることは前認定のとおりである。そして、<証拠>及び弁論の全趣旨によると被告会社は右衝突によりその所有する加害車を損壊せしめられ、その修理に金四四、八八〇円の費用を要したことが認められる。しかしながら、右衝突につき被告会社の被用者被告諸伏和男の過失もその一因となつていること前認定のとおりであり、右諸伏の過失を斟酌して被告会社の蒙つた右損害額のほぼ六割を減額し、被告会社は原告勇に対し一万八〇〇〇円の損害賠償請求権を有するものと認める。この場合、原告の有する前記受働債権が不法行為債権であつても被告会社の有する右自働債権もまた不法行為債権で、かつこれが同一機会に発生したものであるから、民法五〇九条の趣旨に反することなく相殺により対等額でこれを消滅せしめられるものと解すべきところ、被告は本訴において右相殺の意思表示をなしたことは記録上明らかである。そうすると原告勇の債権は右対当額分消滅したこととなり、被告諸伏の関係においても右相殺は絶対効があるから、原告勇の残債権は一七三万九九三〇円となる。

(坂井芳雄 新城雅夫 佐々木一彦)

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